名古屋 不動産の設計
政府が国民から税や社会保険料を徴収して、それを国民に失業給付、年金給付や医療支出として、あるいは公共支出として移転するので、高所得階層から低所得階層への所得の再分配効果の作用をする可能性が高い。
例えば、所得税は一般に累進度が高い(すなわち高所得者の税率が高い)ので、所得の再分配効果は高い。
年金や医療、あるいは教育支出等も所得再分配効果がある。
例えば、国立大学の比較的安い授業料と国からの高い補助金支出には、所得再分配効果があるといえよう。
福祉国家のもう一つの特色は、市民生活を保護する役割をもっている点である。
個人の生活が個人の責任においてなされるのは市民社会において当然のことである。
しかし、不幸にして個人が自己の生活を営むことができなくなった時に、公共部門がそれに援助を差しのべる程度が強いのが福祉国家といってもよい。
例えば、失業、病気、身体障害、あるいは引退後の生活を考えたらよい。
企業倒産や交通事故、火災、個人の死亡、等もセーフティ・ネットの対みとなりうる。
セーフティ・ネットは安全網と訳されるように、脱落を網で防ぐ目的がある。
セーフティ・ネットの機能のすべてを必ずしも公共部門が担うのではない。
これまでの日本では家族が担う場合が多かったし、わが国のように企業がそこに働く人達に施すこともある。
企業の健康保険制度がその代表である。
公的年金や医療保険の拠出を企業と労働者が折半していることも、広い意味では企業がセーフティ・ネットの担い手と理解できる。
民間会社が生命保険や損害保険、あるいは医療保険を運営していることも忘れてはならない。
福祉国家というのは、それを家族や企業に大きく期待するのではなく、主として公共部門(国家、地方公共団体)が担うものであると理解してよい。
福祉国家とは個人生活のセーフティ・ネットとして公共部門の役割を重視するのである。
セーフティ・ネット制度を運営する時に、いつも問題になるのがモラルハザード(道徳の欠如)と訳されるが、制度の悪用と理解した方がよりいいであろう。
例えば、失業保険制度が充実していれば、生活費に困らないので失業中に真剣に求職活動を行わない労働者がいる。
生活保護支給にも同様な効果が潜んでいるといえる。
医療保険制度が確立していれば、病院への依存や、過剰な検査や投薬を行う医者の存在等、社会保障制度にまつわるこの種のモラルパザードは枚挙にいとまがない。
イギリスのS首相が、勤労意欲を阻害するとして社会保障制度を攻撃したのは有名である。
セーフティ・ネットを重視する福祉国家は、このようにモラルパザードがはびこる危険性を秘めているのである。
福祉国家は公共部門の役割が大きいので、GDP(国内総生産)に占める税収や社会保険料の比率を国際比較することによって、どの国が福祉国家であってどの国がそうでないかを知ることができる。
厳密には公共サービスの質的な側面も調べる必要があるが、ここでは比較の容易な量的側面に限定する。
デンマーク、スウェーデン、フィンランドの北欧諸国の税収比率が極めて高い。
オランダ、フランス、ドイツといった、いわゆる中欧諸国の比率も相当高い。
「ゆりかごから墓場まで」といわれたイギリスはかなり低い地位にいる。
日本とアメリカが非常に低い。
社会保険料比率の高い国は、ドイツとスウェーデンである。
アメリカとイギリスの比率が相当に低い。
日本はこの図に示された国の中では中間くらいの地位にある。
しかしこの図に示されていない多くのヨーロッパ諸国がドイツやスウェーデンの水準に近いことを考慮すれば、日本は全体的にいえば社会保険料比率の低いグループに属している。
これらの図表でわかることの結論は、まず福祉国家の典型は北欧諸国であり、中欧諸国もそれに近い性質を持っている。
逆に非福祉国家の典型といってよい国は日本とアメリカであり、イギリスもそれに近い国になりつつある。
簡単に図式化すれば、先進資本主義国は、北欧・中欧の福祉国家群、英米と日本の非福祉国家群、という二分化が可能である。
わが国が国際比較上は福祉国家でないことはよくわかったが、そのことが直ちに日本は低福祉国であると結論できない。
そこに問題設定のむずかしさがある。
わが国は伝統的に公共部門が福祉に関与するのではなく、家族や企業(特に大企業)が福祉の担い手として存在していたことを忘れてはならない。
家族や企業が公の福祉の肩代わりをする分が、少なくとも公共部門の数字に統計として現れていないということなのである。
例えば、年老いた親と成人した子供が同居していたり、経済的に子が年老いた親の面倒をふたりする形態は、私的に家庭内で経済保障をしていたのである。
最近になって公的年金制度や私的年金制度が充実してきたので、家庭内の私的保障は弱体化したが、過去にはここで述べた親子間の私的扶助は一般的だった。
企業(特に支払い能力のある大企業)が、社宅に代表される住宅や、組合健保に代表される医療の分野で、従業員に相当手厚い援助をしていたのも、日本的な企業福祉制度として有名であった。
ここでは大企業ということがポイントで、中小企業に勤務する人や、農家・商家等の自営業の人は、大企業が行っていたような企業福祉の恩恵を受けることはなく、自分たちで保障をする必要があったのである。
あるいは、国民健康保険や政府管掌保険、国民年金制度で代表されるように、中小企業で働く人、自営業や退職者の人達には公共部門が社会保障の担い手になっていたが、その水準は決して高くなかったといってよい。
このように理解すると、わが国に関する福祉制度の特色は次のようにまとめられよう。
わが国は公共部門がおおいに関与するという意味での福祉国家ではなかった。
公共部門がやらない、あるいはできない分を家族や大企業が一肩代わりしていた。
中小企業に勤務する人や自営業の人は、国や企業の関与する程度が低いので、福祉のレベルはそう高くなかったし、その分自助努力に頼らざるをえなかった。
この現みを私は福祉における二分化(すなわち、福祉を享受できる大企業に勤める人と、そうでない自営業者や中小企業に勤める人)ないし二重構造と呼んでいる。
大企業に勤務する人達には、企業自身が相当手厚い福祉施策を用意していたので、福祉水準はかなり高くありえた。
しかし、中小企業や自営業者の人達は、福祉国家ではないわが国の低い公共部門の福祉政策の下にあったので、大企業の人達と比較して、福祉水準は相当見劣りしていたのである。
わが国は大企業と中小企業の間にかなりの賃金格差がある。
それを二重構造と呼ぶが、福祉の分野でも同じことがいえるのである。
二分化をなくすためには、公共部門が積極的に介入する福祉国家に向かう必要があることと、大企業の関与に変化があってもよいというのが私の主張である。
太平洋戦争の敗戦は、日本が物質的・精神的に完全に崩壊したという意味で、大変な不幸と痛手であった。
人的損失としては、戦場で砲火に消えた兵士のみならず、空襲によって命を失った人の数は尼大なものになった。
経済的損失としても、工場・事務所・家屋の被害額も巨額であったことはいうまでもない。
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